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城壁

 ずいぶん前、何度目かの沖縄旅行で、今帰仁城跡へ行った事があった。

 ただ何となく、宿の近くだったので行ってみようと。

 少し小高い丘の上にある城跡は、城壁に囲まれた要塞のようで、その入り口はとても小さかった。

 え、これが入り口?

 後に、琉球のグスクは、この小さな門が城への入り口だと知った。

 ここを入ると、外とは完全に隔離されてしまう。

 何の予備知識もなかったあの時、ただ、ただ、不思議な空間に紛れ込んだ気がしていた。

 あれから、ずいぶん経つのだが、ふと、他のグスクも見てみたいと思い立った。

 中城城(なかぐすくじょう)

 首里城から15キロほど北へ、約30分の距離である。

 思いの外近い。

 連休明けの平日、めちゃ空いている。

 首里城は、朝早くても観光客がうじょうじょいたが、ここは、車が数台止まっているだけ。

 案外マイナーなんだ、と思いつつ入場。

 駐車場からてくてく歩き、正門までぐるっと迂回する。

 正門へは、現代の公道から直接アクセスはできない。

 グスクがあるのは、丘の上である。

 ゆるやかな坂を登りながら、そこらに自生している植物が南国なんだと主張している。

 なんと、14世紀前後に築城されたらしい。

 会津鶴ヶ城が今のような形になったのが16世紀後半である。

 ここは、それより200年も前に城壁が作られている。

 琉球石灰岩は加工しやすかったらしいが、当時の斧類は、ほとんど残っていないらしい。

 歴史なんて、興味ない部類のトップを争っていたけど。

 時代の流れが、それぞれの地域で違っているのが、何ともロマンである。

 地形に合わせた城壁は、緩やかな曲線を描き、波打つようだ。

 そして、高い場所からは、海が見える。

 碧い空と、青い海だ。

 ずいぶんキレイに残ってると思ったら、再建された部分も多かった。

 一度崩れた城壁を解体し、石一つずつに番号をつけ、風化し部分を補いつつ、あたらに組上げている。

 現在も修復中の部分があった。

 沖縄の城跡では、建物が残っていない。

 再建されているのは首里城ぐらいだ。

 がらんとした空間だからこそ、城壁が浮き立つんだなぁ。

 小高い丘の城壁の中は、芝が敷き詰められており、緑と石のコントラストが美しい。

 まさに、天空の城である。

 沖縄本島には、約300もの城跡があるらしい。

 そのほとんどが、琉球石灰岩が取れる中南部に集中しているそうだ。

 その規模は、様々なんだろうが、なんだかムクムクと興味が湧いてきた。

 いつか、見てまわろうかなぁ。

 と、この時は、ぼんやり思ったが。

 ま、網羅するのは、半端ないだろうね。

 ハブもいるしさ。