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日々

 繰り返される日常の中で、どれほどの記憶が残るのだろう。

 昨日の天気を思い返しながら、昼何を食べたか考える。

 キッチンを出て二階へ上がり、何を探しにきたか・・・

 一度に二つ以上の事を考えると、どちらかが抜け落ちる。

 う〜む。

 誕生日が過ぎて、ねんきん定期便を見ながら、ずっと先の事だと思っていた。

 しかし、よくよく考えると。

 あたし・・・還暦じゃん。

 数年後には、年金受給者やん。

 まじか。

 18歳の夏に東京幡ヶ谷のセイフーストア前のワゴンセールで買ったタンクトップ。

 まだ着てるのに。

 そりゃ、ちょっとほつれたから、軽く繕いはしたけれど。

 生地がしっかりしてるし、柄も数周まわってダサくないし。

 いやいや、そういう事じゃなく。

 時間は、否応なく流れ、中年などとっくに過ぎ去り。

 高齢者の仲間に片足ひっかけてるのね。

 ああ、どうりで。

 老眼は進むばかりだし、髪は真っ白なわけだ。

 なのに、いまだに追われる夢を見る。

 もう、追いかけっこしなくてもいいはずなのに。

 何かから逃れようと行き先不明の汽車に乗る。

 ブレーキの効かない車で焦りまくる。

 街の雑踏で迷子になる。

 いやはや。

 

 

 確定申告を済ませ、これまでの書類を整理した。

 ファイル分けはしているけど、無駄に取っておくのもどうかと思い。

 保存期間(7年)を過ぎたものは、清掃センターへ運ぶ事にした。

 すると。

 昔書いたボツ原稿が出るわ出るわ。

 一時期、がむしゃらに書いていた時期があったのよね。

 片っぱしから賞に応募してた。

 カスリもしないモノから、最終選考に残ったモノまで。

 統一性もなく、書きまくっていた。

 書くことで何を表現したかったのか。

 何を伝えようともがいたのか。

 曖昧なままだった気がする。

 そりゃ、賞取れないよなぁ。

 いや、取ったところで、先はなかっただろう。

 今なら、わかる。

 でも、あの頃は、書く事でしか見えない世界を求めていた。

 現実逃避と承認欲求ね。

 またの名を、独りよがり。

 あはは。

 粋がってたなぁ。

 そんな事を考えつつ。

 ボツ原稿をゴミにする事は、出来なかったとさ。

 

 春のどか雪は、春めいた景色を一変させ、モノトーンの世界を作った。

 どしどし落ちてくるボタ雪は、木々にまとわり真白な花を咲かせている。

 翌朝、すっかり晴れ渡った青空が眩しい。

 みるみる溶けてゆく春の雪。

 今夜もまた、降るのかな。