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夏至から

 夏至の頃の夕焼けは、なぜか、とてつもなく紅く染まる。

 いつもなら、夏至を過ぎるとすぐに啼き出すひぐらしだが。

 七夕を過ぎた頃、ようやく鳴き出した。

 とはいえ、グレゴリオ暦での七夕って、どうよ。と毎年思う。

 まあいい。

 ひぐらしが鳴き出すと、夏を感じる。

 

 母が通う病院から、連絡が欲しいと伝言があった。

 数日前に、薬をなくして再処方してもらったのだが、その件についてだった。

 薬をなくしたのは、今回が初めてではなかった。

 しかし、当の母は、今回が初めてだと言い張った。

 ま、そこを責めても仕方ない。

 自分に都合の悪いことは、ちゃんと記憶から抹消されるからだ。

 医者は、これ以上同じようなことが起きても、対応しないと言い切った。

 その対策として、看護支援を受けたらどうかと提案された。

 とりあえず、施設の担当と相談します。

 そう言って、電話を切った。が。

 なんじゃ、それ?

 ヘルパーってこと?

 介護保険のこと?

 さっぱりわからん。けど。

 で、調べてみると。

 生活の手伝いをする、介護支援と、

 医師から指示を受けて支援する、看護支援の二通りがあった。

 母の場合、薬の管理が難しくなっているので、看護支援になる。

 医者から処方されている薬は、看護師しか管理ができないのだ。

 ともかく、施設の相談員に連絡した。

 母の場合、要介護1だったので、看護支援は問題なく受けられるらしい。

 まずは、ケアマネージャーを交えた説明を受けることになった。

 母の施設は、ケアハウスと分類されている。

 が、しかし、介護施設ではない。

 ややこしいが、ケアがない、ケアハウスなのだ。

 つまり、住まいと食事の提供と緊急時の対応だけの施設なのだ。

 介護や看護が必要になると、ケアマネージャーと相談して、別会社からヘルパーさんを頼むのだ。

 ま、分かってったが、直面すると、アタフタする。

 今回は、週1回、訪問看護を受けることになる。

 利用料金は、30分で500円程度なので毎月2000円ほどになる。

 それで、済むなら、安いもんだ。

 そんなこんなで、毎週施設に通っていた。

 母の認知は、それほど酷くはないのだが。

 ちょっとしたきっかけで、モノ取られ妄想が起動する。

 それは、食べ物の残りが乏しくなったりした時である。

 不安なんだと思う。

 分かっちゃいるけど、遅れる時もある。

 毎回、ほぼ同じような内容の食料を買うのだが、うんざりする。

 同じなら、楽でいいと思えばいいのだが。

 虚しくなるのだ。

 母の買い物は、最大のストレスになっている。

 単純に考えればいいと、頭で理解しようとしても、苦痛でしかない。

 愛せない。

 ま、それだけなのだな。

 結局、私は、自分で自分の首を絞めてる。

 割り切れない計算に、疲れてしまう。

 とはいえ。

 まだまだ、続くのだろうなぁ。