· 

海は広いよ

 翌日、青空が見えている。

 恒例になった朝の散歩をしてから、伊良部島を一周することにした。

 観光スポットらしい場所を見て回る。

 同じ車に何度も遭遇。

 そりゃそうだ。

 みんな同じコースを回ってるからね。

 アダンの根が入り組んでるけど、獣道みたいな空間が面白い。

 風光明媚なスポットより、こういう、普通の風景が新鮮である。

 南国特有よね。

 グングン車を走らせながら、島を巡る。

 小さな丘の頂に駐車場があったのだが、また、同じ人たちが観光してるからスルーした。

 しばらく車を走らせたが、何となくさっきスルーした場所が気になって、Uターン。

 誰もいなくなっていた駐車場に車を止めて、丘の上から海を見渡した。

 え!!

 えええええぇ。

 すんげー

 ちょうど青空が広がってきて、海の色がマリンブルーに輝き、リーフに打ち寄せる白波が、南の島を主張してた。

 戻ってきてよかった。

 運転しながらの進行方向からは見えなかったので、単純にスルーした自分がアホだった。

 いやー、参ったぜ。

 ここまで青いとは。

 遊歩道を歩きながら、ずいぶんの時間をここで過ごした。

 陽射しが出ると、急に気温が上がる。

 とうとう、半袖の出番だ。

 氷点下の家から、雪の関東をすり抜け、南の島にいる自分。

 日本は、広いね。

 海も広いね。

 伊良部島をぐるっと一周して、伊良部大橋が見渡せる展望台まで来た。

 全長3540m日本一の長さらしい。

 総工費399億円

 当時この橋の建設が話題になった時、そんな公費かけてメリットあるの?

 そのお金を地元に還元した方がいいんじゃね〜の。

 などと、実に単純に思っていた。

 しかし、今回の旅では、何度もこの橋を行き来した。

 そして、この橋がなければ、下地島空港も宮古島を訪ねることもなかっただろう。

 と、気がついた。

 地元に住まう人も、観光客も、この橋の恩恵は計り知れない。

 宮古島と車で行き来する事は、生活の上で欠くことが出来なくなっているのだ。

 しかし、かつての暮らしと変わってしまったと、嘆く人にも出会った。

 静かだった島に開発の手が入り、小洒落たホテルやショップが次々と出来ている。

 新しい施設が出来れば雇用も生まれそうだが、地元採用はほぼ無いだろう。

 古くからサトウキビ栽培を生業とする人と、浮かれた観光客を相手にする仕事では、埋めようのない溝があるかもしれない。

 どこの観光地でもそうだが、共存は、とても難しい。

 毎朝、ホテルの周りを散歩していて、その格差を感じた。気がする。

 

 

 なぁ、にゃんこ。