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ヤギとおばぁ

 お天気は曇りだが、雨は降りそうにない。

 空港で借りたレンタカーは、ハイブリッド仕様で慣れるまでアワアワした。

 バックミラーはモニターだし、少しでも車線がズレるとピーピーうるさいし、一番苦労したのはギアが簡素すぎるのだ。表記も分かりにくいし、ナビの映像が立体なので見にくい。

 ううううぅー。おばさんは、マジで機械に文句言ったわ。

 ひとまずホテルにチェックイン。

 食事は付けていなかったが、レストランがあるはずなので、今日はそこで食べようと思っていたら、事前予約のみの対応らしく断念。近くの飲食店も期待できず。

 このホテルは、伊良部島でも外れのほうにあり、その分景色は最高なのだが、午後4時で終わる飲食店が数軒あるだけ。

 まじか、ここでメシ難民になるのか!!

 もう、宮古島本島まで行くしかない。

 ま、車で20分だけどね。

 道の駅に行けば、天ぷら屋さんがあるのをリサーチ済みなので、そこを目指す。

 が、その手前で大きめのスーパーを発見。空腹のあまり、迷わず入店さ。

 沖縄のスーパーに期待ワクワク。

 スーパーって、どの地域に行っても、基本は、似たような食材が並んでいるのだが、地元資本のスーパーだと、多少は地元色が濃くなる。はず。

 おお、島豆腐があるぞ、地元のお魚もあるぞ、島バナナもある。

 ただ、滞在するホテルには、冷蔵庫と電子レンジがあるだけ。

 出来合いのお惣菜やお弁当を買うしかない。

 使い捨ての皿と器、醤油と塩、丸かじりできるトマトや刺身、島豆腐といくつかのお惣菜、翌朝のパン、忘れちゃいけないオリオンビールと泡盛。

 よっしゃ、ご馳走じゃん。

 調査のため、伊良部島の商店にも寄って見た。

 お惣菜は売り切れていたが、ジーマミー豆腐と黒糖アイスをゲット。

 ウッキウキでホテルに戻った。

 ゆっくりと湯船に浸かり今日の疲れを癒やし、さぁ、飲むゾォ、食うゾォ。

 結果、大満足。

 特に、黒糖アイスがめちゃうま。泡盛との相性も最高。

 と、一日目が暮れて行ったのです。

 

 翌朝、昨日買ったパンとコーヒーで朝ごパン。

 沖縄に来ると感じるのだが、スーパーで買うさもないパンがめちゃ美味い。

 本来は、ハードなパンが好みなのだが、沖縄に来るとふんわりやわやわなパンが美味いと感じる。

 発酵が違うのかな。

 これが、持参した碧い月珈琲にベストマッチよ。

 今日も曇りだが、うっすら青空も見えて来た。

 さて、朝の散歩と洒落込むぜ。

 ホテルの周りを散策。

 と言っても、海とさとうきび畑があるだけ。

 でも、それがいい。

 メェー、メェーと甲高いヤギさんの声がする。

 沖縄は、ヤギが多い。

 エサの催促か。

 ごめんね、何もないよー。

 海に沿って歩いていると、バケツを持ったおばぁと出会う。

 こういう場合、迷わず話しかける私。

 おばぁは、アーサーを取りにきたという。

 その前に御嶽でお参りをするらしい。

 一緒に行くかい。

 と誘われ同行する事にした。

 お参りの仕方は、どうすればいいのかと聞いたところ。

 こころさ〜、心があれば、どんなお参りでもいいのさ〜

 独特の沖縄言葉も手伝い、心にじーんと響いた。

 なんとも大らかな。しかし、真髄である。

 以前友人に、神社でお参りするとき、何かお願い事をするの?

 と聞いたことがある。

 そこにいた3人の友人は、3人とも。

 お願い事?しないよ。

 初めてきた神社なら、

 初めましてこんにちは、お邪魔いたします。

 って感じかな。

 おお、そうか、そうだよね。

 神社仏閣をお参りするとき、いつも、何を祈ろうか迷う。

 お願い事をするってのは、人間のエゴだし、神様も仏様もいちいち聴いてはいられまい。

 世界平和なんてのも、なんかウソくさい。

 結局いつも、無になるだけだった。

 何も考えず、思わず、願わない。

 しかし、それもなんかしっくりしないまま、この歳になっていた。

 挨拶、それこそが大事である。

 おはようございます。お邪魔いたします。

 と祈りを捧げた。

 おばぁは、私のお参りが終わると、自分も続けた。

 長い年月、ずっと変わらない祈りを続けているのだろう。

 それは、穢れなき祈りの姿だ。

 おばぁは、お参りが終わると、海に入りアーサーを採り始めた。

 いい朝だ。 

 さぁ、ドライブへ行くよー。

 目指すは、西と東の端っこさ。