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続く別れ

 車には全く執着がない。

 不便な場所に住んでいるので、日常の足として走ってくれれば、とりあえず何でもいい。

 自分で買った最初の車は、知人から10万円で譲ってもらった。

 下取りで値がつかなかったらしいが、急を要していたので言い値で買ってしまった。

 車検付きだったので、それほど悪い条件ではなかった。

 しかし、ビンボーのどん底だったので5回分割にしてもらった。

 セバスチャンと名付けた車は、よく走ってくれた。

 その車の車検が終わる頃、友人の使っていない車を借りることになった。

 無期限である。

 その子は、ジュリアーノと名付けた。

 数年後、車を返すことになり、慌てて中古車を見つけた。

 15万円だった。

 あるんだよね、恐ろしく安値の車って。

 出せるギリギリの値段だった。

 あまり調子が良くない。

 次の車検を通すまでもなく、さよならとなった。

 もう名前は付けなくなっていた。

 またまた慌てて、18万円の車を買った。

 2度目の車検の時、不具合が発覚し、修理に相当額かかることがわかった。

 買った値段より高いのだ。

 潔く、さようなら。

 今度は、ネットで探した。

 で、この車がやって来た。

 32万円だった。

 どうよ、今までで一番高いよ。

 これまでの倍の値段よ〜

 型は古いけど、走行距離が10,000キロ未満だった。

 エンジンルームもキレイだった。

 ま、色はちょっと、どうなの!?ではあったが。

 走ればいいのだ。走れば。

 2回の車検を通した。

 不具合はない。

 この4月で車検が切れるのだが、まだまだ走れる。

 ただ、タイヤがそろそろ寿命だった。

 車検とタイヤかぁ。

 保険も更新だぁ。

 と、思っていたら。

 別な車に乗らないかと、誘いを受けた。

 車検も残ってる。

 天秤にかけた。

 いや、かけるまでもなく、そっちを選ぶお調子もん。

 しかし、まだ走れるのよね。

 乗ってくれそうな人に連絡したが、決まったばかりだと。

 寄付しようとしたが、軽自動車は要らないと断られた。

 じゃぁ、買取専門店で査定してもらうか。

 ・・・

 中古車市場では、すでに取引されていないほどの年式。

 数千円です。と。

 最初に買う気満々な態度で査定してたのに。

 ふん。

 じゃあ、大手の廃車買取サイトで査定するか。

 12,000円が最高値。

 おおぉ、廃車の方が高いぜ。

 待てよ。

 直接、業者に査定依頼したら、どうなるかな。

 ヒャッホー、22,000円だぜぇ。

 直接交渉って、素晴らしい。

 まだ走れる車を廃車にするのは気がひけるのだが。

 車のリサイクル率は、90%を超えるという。

 ゴミになるのではない、生かされるのだ。

 総合的に考えて、廃車の道を選んだ。

 

 中古車買取や下取りで値がつかなくても、廃車買取では、ちゃんと値がつく。

 しかも、サイトや業者で値段が違う。

 車を乗り換えるたびに、勉強させてもらったなぁ。

 で、必要書類を見たら、廃車に必要なリサイクル券がないのに気付いた。

 買った時から、見た記憶がない。

 何しろ、かなり怪しい業者だったからなぁ。

 調べた結果。

 リサイクル券は、紛失しても、別な方法で証明できる事が分かった。

 車体番号と登録ナンバーがあれば、調べられるのだ。

 あー、よかった。

 これなかったら、受託金また払うとこだったわ。

 何事も、勉強です。

 

 この子とは、20日にお別れです。