この樹が紅に色を変えると、秋ももう終盤である。
それまで緑だった葉が、数日で真っ赤に変化してしまう。
鮮やかな紅が次第にトーンを落とし、あずき色になりハラハラと落ちて行く。
すっかり落ち切ると、冬の始まりである。
この樹は、ここへ移った時に、木こりの友人が持った来てくれた。
あれから、かれこれ20年。
一度は、カミキリムシにやられたが荒療治のおかげで生き延びた。
大きくなったなぁ。
霧の濃い朝。
その先には、違う世界が通じている。
気がするねぇ。
今年は、贅沢して薪を買った。
何しろ、去年闘病中だったので、薪作りは出来なかった。
薪が積んであると、ものすごい安心感がある。
これで、この冬も乗り切れる。
電気が止まっても、プロパンガスを使い果たしても。
この薪さえあれば、煮炊きも暖も取れる。
凍える事はない。
入院中に瀕死の状態になった植物たちも。
一年かけて復活した。
だいぶ小ぶりになってしまったが、ちゃんと再生した。
そう、あれから、一年経ったのだ。
しみじみと、命のありがたみを感じている。
今年最後のスカイライン。
まばゆい秋の日。
遠く光るのは、猪苗代湖。
天の鏡とは、この事か。
高度が上がるほど、森は冬支度になっている。
葉を落とした梢越しの空がとても青い。
その枝先には、次の命が眠っている。
落ち葉が足元を包み込んで。
春まで静かに守っている。
そんな森を歩くのが、とても好きだ。
さて、浄土平でソフトクリームを食べ納め。
と、思ったのに。
すでに、店じまいとなっていた。
残念。
また、来年だ。
そう思える幸せを噛み締める。