少し早めの墓参りを済ませるため、金曜の早朝に出かけた。
団子を作り、庭の花を切り、ペットボトルに水を詰めて、車を走らせた。
風もない穏やかな朝である。
線香の火を付けるのに、苦労しなくて済んだ。
今回は、ローズの香り線香だ。
この手の香り付き線香は、家で供える事はない。
頂き物を破棄することもできず、こうして墓地で使う。
買ったら高いんだろうなぁ。
しかし、すごい匂いだ。
いい匂いと感じる人もいるんだからなぁ。
と、どうでもいいことを考えながら、ひとまわり親戚の墓石を回る。
団子は、土手の笹の葉を採って皿にした。
一つ残った団子は、口の中にポイと入れた。
この味気ないお供え団子が結構好きである。
帰り道は、生まれた家があった場所と父が晩年住んでいた場所を通る。
生まれた家は、影もない。
痕跡は、父が植えた桜の木が残っているだけである。
それも、いずれは伐採されるだろう。
すっかり様変わりしたのその場所に、何の愛着もない。
だが、必ずその前をゆっくり通過する。
父が最後に住んでいた家も、すでに取り壊されている。
更地にされた後、雑草が生い茂っているだけだ。
そこに思い出を重ねるのは難しい。
それでも、私は、必ずその道を通る。
それが、墓参りの儀式なのだ。
特別な事は何もしない。
たった、それだけである。