危機管理は、自分なりに出来ている方だと思っていた。
まさかの事態でも、無闇に動揺しないように、日頃から「もしも」を忘れないようにしている。
なのに。
迂闊だった。
そして、こんなことが自分にも起こるんだと!!という驚き。
泥棒が入ったのだ。
まさか!!!!!でございます。
6月某日、外出先から帰ると玄関の鍵が開いていた。
ん??
確かに閉めたはずだけど・・・
嫌な予感が脳裏を駆け巡るが、閉め忘れたと思いたかった。
店の中は荒らされた形跡はなかった。
なんだ、やっぱり忘れたんだ!!
裏手の窓を開けていたのを思い出した。
しかし、きちんと閉まっていた。
鍵までかけてある。
閉めたっけ??
2階に上がり、現金の保管場所を調べてみた。
空っぽだ。
床には、うっすらと土が散らばっている。
やられた。
あああああああああぁぁぁぁ
一瞬にして、何を考えていいのかわからなくなった。
しかし、ここでパニクってはいられない。
通帳や印鑑の確認。
それらは取られていない。
何故か商品券もそのままだった。
店の釣り銭を確認した。
いつでも再開できるように、釣り銭入れは満タンにしていた。
見事、空っぽである。
硬貨だけを集めた空き缶も空っぽ。
1円硬貨が一枚だけ、台所の床に落ちていた。
母の財布を確認した。
現金だけ抜かれ、通帳はそのままだった。
もう、間違いではない。
この店には、泥棒が入ったのだ。
現金だけ、見事に盗まれている。
生まれて初めての110番通報。
慌てず、的確に、状況説明。
程なくして、パトカー到着。鑑識も到着。
ここからは、もう、刑事ドラマや再現ドラマのような世界観。
当事者でありながら、第三者的視点で見てしまう。
ちょっと、ワクワク。
いやいや、私は、被害者だ。
自覚しよう。
ああ、でも、面白いぞぉ。
ドラマって、マジでリアルだったんだなぁ。
妙に感心してしまう自分。
約三時間ほどの現場検証は、実に興味深意い時間となった。
この事件が起きる数週間前から、何となく戸締りが気がかりになっていた。
この日も、裏手の窓を開けていたのが気になっていた。
だが、出先でちょっとしたアクシデントがあり、すぐに戻ることができなかった。
これまでも、いつも開けていた窓だったのだが、なんとなく、なんとなく気になった。
後から思えば・・・なのだが、虫の知らせみたいな感覚なのかも知れない。
木々が生い茂り、通りから見えにくくなっている点や、常夜灯を点けない点。
近所が遠い点。通りから駐車場が見え、車がなければ留守だとわかる点。
泥棒に入るには、好条件が揃っている。
それに付けて、窓が開いている。しかも裏手。
さぁ、どうぞ、お入り下さい。
招き入れているようなもんだわ。
家賃支払い前の現金を、根こそぎやられたのは痛いが、これも勉強である。
むしろ犯人と鉢合わせしなかっただけ、良しとしよう。
今の世の中、咄嗟に何をされるか分からない。
これだけで済んでよかったと思うことにした。
もし、ここから盗んだお金で、誰かの生活が潤ったなら。
それは、それで、人助けになったのだと考えるのも悪くない。
防犯カメラが回っているかも知れないリスクを冒し、足場のない窓へ這い上がって侵入し、盗みを決行したのは、相当の緊張を強いたと思う。生活に困っての犯行なのか、スリルを楽しんでいるのか、想像は様々だが、自分の棲家に帰り着くまでは、生きた心地がしなかっただろう。犯行後の数日間も、捕まるかも知れない恐怖を抱いただろう。
それが快感で犯行を重ねる人もいるだろうが。
しかし、いつか終わりが来る。
残念ながら、防犯カメラの設置はしておらず、犯人の手掛かりは、残していった足跡と指紋、DNAに頼るしかない。それも、前科が無ければ照合しようもない。今後、再び犯行に及び、ヘマをして捕まらない限り、検挙は難しいだろう。
と、思う。
悔しさがない。
と、いえばウソになる。
だが、多くを考えるいい機会になった。
現場検証もいい経験となった。
盗まれた分の現金を、ゼロから築いてやる。
そんな意気込みも生まれた。
あたしゃ、泣き寝入りはしないよー