春色の汽車に乗って
海に連れて行って
線路の脇の蕾は
赤いスイトピー
青春真っ盛りの頃
この歌を何度も口ずさんだ
誰もが知るアイドルの曲
歌い手に興味はなかったが
この歌詞が
大好きな人への気持ちと重なった
とまぁ、そんなピュアな時代もあったのさ。
ところが、意地の悪いおばさんになった今は。
まず、赤いスイトピーなど、ほとんどない。写真のように、ピンク、紫、白がメイン。赤もないわけでないが、この歌が流行った頃は、メジャーではない。いやいや、蕾見ただけで、赤ってわかるはずがない。まぁ、そもそもが架空の話なのだから、大きな問題ではないのだがね。
この歌の功績は、当時まだあまり知られていなかったスイトピーという花が、多くの国民の知るところになった。
これぞ、国民的アイドルのなせる技である。
劇団時代、稽古が終わった後の飲み会で、この歌を口ずさんだことがあった。
想い人を心に秘めながら、小さく歌っていた。
すると、いつも怖い面持ちの演出家に、初めて誉められたのだ。
「下手くそだけど、いいぞぉ。愛がある」
それを見ていた同期の女の子が、負けじと歌い出した。
彼女は、宝塚を目指していたこともある子で、歌もそこそこ上手いし、何より度胸があった。
何の歌かは忘れたが、対抗心剥き出しで歌い出したのだ。
演出家は、最後まで聞くことなく。
「作為的だなぁ。愛がない」
その演出家の口癖は、
「愛だよ。愛」
何よりも、愛を優先していた。
アンダーグランドな小劇場の演出家らしいセリフだ。
ま、後にも先にも、その演出家に褒められたのは、その一度だけだった。
スイトピーを見ると思い出す、私の純愛青春物語である。