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休業249日目

はつゆき

 窓を開けると、テラスに散らばる雪粒たち。

 すぐに消えてしまうのだけれど、冬の到来を実感させる朝である。

 ちゃんと雪の結晶なんだなぁ。

 母の入居している施設から、12月から1月末まで面会禁止の知らせが来た。

 少しホッとしている自分がいる。

 当面は、クロネコさんに荷物を運んでもらう事になる。面会に行っても、荷物の受け渡しをするだけなので、滞在時間は数分間である。約10日分の食料は、大きめの段ボール箱に満タンである。母は、その食料をペロリと平らげる。なのに、食欲がないと言いふらすらしい。少し前にキャベジンを買ってきて欲しいと頼まれた。どうやら、食べ過ぎで胃がもたれるらしい。少しムッとした私は、医者の薬飲んでる人は、買い薬は飲めないから、今度の診察で先生に相談した方がいいよ。と言ってみた。素直に納得した母は、担当医にその旨を告げ、めでたく胃腸薬が処方された。夏頃は、食欲がないからと、食欲増進剤を処方されていた。

 何だかな。

 そんなんでいいのか!?と、思ってしまう。

 私は母に対し、高齢である事や持病を気遣った食事を勧めてはいない。

 食べたいものを食べたいだけ食べればいいと考えている。

 健康に敏感な母は、体にいいと言われれば、何でも飛びつきたくなるタチである。

 クルミがいいと言えば、クルミを欲しがり。

 ブルーベリーが目にいいと言えば、サプリを欲しがる。

 チョコがいいと言えば、チョコ。

 栄養ドリンクも大好きである。

 私は、その望みを叶えてあげる。

 健康で長生きしたいなら、管理された施設の食事をちゃんと食べていればいいのだが、どうやらお口に合わないらしい。そりゃ、塩分、糖分控えめの高齢者仕様だものね。

 よって朝食以外は、自炊をしている。自炊といってもごく簡単なものなのだが、好きなものを好きなだけの食生活である。どうしても、甘いものが多くなる。

 運動もしない。

 そりゃ、胃もたれが起こるよね

 当然の流れなのだ。

 だが、もうそれを注意しようとは思わないし、むしろ、母が好みそうな菓子パン類をたんまり届けている。母の喜ぶ顔が見たいからではない。

 健康を気遣ったところで、いまさら遅い。長年続けている食生活を変えることなど無意味だからだ。

 先月、85歳を迎えたのだが、ここへきて食管理をしても、どれほど長生きできるか不明である。高血圧や血液サラサラ、心不全の予防薬に、骨密度や胃腸薬、高齢者特有の不眠による睡眠導入剤と薬の量が減ることはない。ちょっと体調が悪くなると、すぐさま病院へ行く習慣で生きてきている。

 健康長寿のカテゴリーには、当然ながら入らない。

 自分の管理など不可能な人種である。

 だったら、もう、好きに食え!!

 何しろ、その方が、本人は幸せなのである。

 老い先短い(かもしれない)人生の楽しみを奪うことこそが、親不孝だと思うのだ。

 そして思う。

 自分を甘やかし続ける方が、長生きするのだろうなぁ。と。

 かくして、来週も、菓子パンと甘いものたっぷりの荷物が母に届けられるのであった。

 ちなみに、母の食欲ない!!詐欺は、ごはん(米)が食べたくないだけであり、菓子パンやフルーツ、饅頭、飴玉などの果物やお菓子は、モリモリ食べているのある。

 そりゃ、お菓子ちょこまか食ってりゃ、食事でコメまで食えないわ。

 幼児かよ。