はつゆき
窓を開けると、テラスに散らばる雪粒たち。
すぐに消えてしまうのだけれど、冬の到来を実感させる朝である。
ちゃんと雪の結晶なんだなぁ。
母の入居している施設から、12月から1月末まで面会禁止の知らせが来た。
少しホッとしている自分がいる。
当面は、クロネコさんに荷物を運んでもらう事になる。面会に行っても、荷物の受け渡しをするだけなので、滞在時間は数分間である。約10日分の食料は、大きめの段ボール箱に満タンである。母は、その食料をペロリと平らげる。なのに、食欲がないと言いふらすらしい。少し前にキャベジンを買ってきて欲しいと頼まれた。どうやら、食べ過ぎで胃がもたれるらしい。少しムッとした私は、医者の薬飲んでる人は、買い薬は飲めないから、今度の診察で先生に相談した方がいいよ。と言ってみた。素直に納得した母は、担当医にその旨を告げ、めでたく胃腸薬が処方された。夏頃は、食欲がないからと、食欲増進剤を処方されていた。
何だかな。
そんなんでいいのか!?と、思ってしまう。
私は母に対し、高齢である事や持病を気遣った食事を勧めてはいない。
食べたいものを食べたいだけ食べればいいと考えている。
健康に敏感な母は、体にいいと言われれば、何でも飛びつきたくなるタチである。
クルミがいいと言えば、クルミを欲しがり。
ブルーベリーが目にいいと言えば、サプリを欲しがる。
チョコがいいと言えば、チョコ。
栄養ドリンクも大好きである。
私は、その望みを叶えてあげる。
健康で長生きしたいなら、管理された施設の食事をちゃんと食べていればいいのだが、どうやらお口に合わないらしい。そりゃ、塩分、糖分控えめの高齢者仕様だものね。
よって朝食以外は、自炊をしている。自炊といってもごく簡単なものなのだが、好きなものを好きなだけの食生活である。どうしても、甘いものが多くなる。
運動もしない。
そりゃ、胃もたれが起こるよね
当然の流れなのだ。
だが、もうそれを注意しようとは思わないし、むしろ、母が好みそうな菓子パン類をたんまり届けている。母の喜ぶ顔が見たいからではない。
健康を気遣ったところで、いまさら遅い。長年続けている食生活を変えることなど無意味だからだ。
先月、85歳を迎えたのだが、ここへきて食管理をしても、どれほど長生きできるか不明である。高血圧や血液サラサラ、心不全の予防薬に、骨密度や胃腸薬、高齢者特有の不眠による睡眠導入剤と薬の量が減ることはない。ちょっと体調が悪くなると、すぐさま病院へ行く習慣で生きてきている。
健康長寿のカテゴリーには、当然ながら入らない。
自分の管理など不可能な人種である。
だったら、もう、好きに食え!!
何しろ、その方が、本人は幸せなのである。
老い先短い(かもしれない)人生の楽しみを奪うことこそが、親不孝だと思うのだ。
そして思う。
自分を甘やかし続ける方が、長生きするのだろうなぁ。と。
かくして、来週も、菓子パンと甘いものたっぷりの荷物が母に届けられるのであった。
ちなみに、母の食欲ない!!詐欺は、ごはん(米)が食べたくないだけであり、菓子パンやフルーツ、饅頭、飴玉などの果物やお菓子は、モリモリ食べているのある。
そりゃ、お菓子ちょこまか食ってりゃ、食事でコメまで食えないわ。
幼児かよ。