秋の日
ひと月半ぶりの山登り。
雲は多めだったが、青空も澄み渡りまずまずの空模様。
ちょっとズルして、天元台のロープウェイとリフトを乗り継いで、いきなり1,500m高地へワープしてしまった。
飯豊山登山以来なので、あまり無理はしないで行こう。
リフトの最終地点から、わずか30分登っただけで、森林限界を超え見晴らしのいい天空散歩道に出た。当初の予定は、西吾妻経由西大てんだったが、同じ距離で反対方向に行くと東大てんがあると気づいた。途中変更は良い山行とは言えないが、地図もあるし、危険箇所もなさそうだし、西大てんは、何度か行ったことがあるので、東大てんに行くことにした。
一旦、少し降り。それからは木道を進む。池塘が点在する湿地帯は、静かに色を落とし、草紅葉が始まっていた。
整備された木道を、スキップするくらいの足取りで歩いて行く。日本百名山の西吾妻へ登る人はそれなりにいるが、浄土平までの縦走路にもなっている東大てんへ行く人は、殆どいない。数人とすれ違ったが、時間的に別なルートから来たのだろう。
青紫のリンドウが、木道に沿って咲き続けている。りんどうは、午前中しか花が開かない。しかも、ほんのわずか密やかに咲くのだ。いい時に来たなぁ。
静かだった。木道に響く自分の足音しか聞こえない。
こんないい場所、何で今まで来なかったんだろう。
東大てんの頂上は、木々が生い茂り眺望は望めない。が、その周辺は、眺めがとても良いのだ。吾妻連峰がずーっと見渡せる。
頂上付近で会ったグループは、早朝に浄土平から縦走してきたと言っていた。
片道6時間である。しかも、今日中に浄土平へ戻ると言っていた。
通常は、避難小屋1泊のコースである。2泊で計画する人もいるくらいのルートだ。
キツいっすよー。と、笑い飛ばしながら、スタコラさっさと去っていった。
若いって素晴らしい。
彼らの先に見える一切経山を確認したら、なんか、自分も行けそうな気がしてきた。
よし、いつか行ってみよう。向こうからでもいいかも。
でも、この辺りは、熊ちゃんたちのテリトリーなのよね。単独は、やめようっと。
彼らを見送りながら、おにぎりを頬張り。あれこれ夢想した。
のんびりしたつもりもなかったが、気がつくとリフトの最終時間が迫っていた。下りは、リフトを使わず降りようと思っていたが、思いの外遊んでいたらしい。
ロープウェイの最終時間もあるので、ここは文明の力に頼り、リフトで下山した。
薄曇りだった空は、次第に雲行きが怪しくなり、ポツリと雨粒を数滴落とした。
ああ、これは、雨粒ではなく。雲の中の水滴なのか。んん。それが、雨か。
降りのリフトに揺られながら、ぼんやりと、取り止めもなく考えている自分が、ものすごく幸せなのだなぁと感じた。
最後駆け足になったが、とても楽しい山行だった。
スーッとしたメントールの香りのするシラタマノキ。まんまるの実を付けていた。