あまりミーハーな方ではない。
流行に興味は湧かないし、よって、敏感でもない。
その昔、与那国島へ行ったのだが、当時「ドクターコトー」というドラマが流行っていたらしく、そのロケ地を巡る人が幾人もいた。私は、テレビを持っていなかったので、そんなドラマの事などちっとも知らず、いや、聞いたことくらいはあったが、その舞台が与那国島だとは知らなかった。
どうりで、飛行機が満席なわけだ。
いや、そのことではない。
「小沢の桜」だ。
ずいぶん前に「はつ恋」という映画のラストシーンがここで撮影されたらしい。それまでは、特に気にも留められなかっただろう桜の木。畑の中に、ポツンと立っている。
この桜には、土地の人曰くの物語が秘められているようだが、一本桜の多い地域なので、知らなければ通り過ぎてしまうだろう。
何故この桜がロケに使われたのかは不明だが、そのおかげで、映画が公開されて随分経つのだが、いまだに訪れる人が多い。とはいえ、保存会の有志が駐車場の整備やトイレの設置、ライトアップをしているだけで、経済効果は生まれていない。
肌寒い日だったが、移ヶ岳をバックに、ベストボジションでカメラを据え付けているおじさまが一人いた。おそらくライトアップされた桜の木を撮影するのだろう。日没までは、3時間はたっぷりあった。ご苦労なこってある。
東北には、一本桜が多い。田畑の近くに植えてある。種まき桜と呼ばれ、農作業の目安とされるのだ。だが、どうせなら、物語性があったほうが面白い。その真実性は、問題ではないのだな。