これだけは、威勢がいい。
当初、数株移植しただけなのに、今や、かなりの面積を占拠している。
いちごは、いちごでも、野生種だからなのか、痩せた土地だからこそ旺盛に育ってるのだろう。
ワイルドストロベリー。
小粒だが、香りが良くて、ジャムにすると素晴らしく美味しい。小指の先ほどの果実をつまんで収穫するので、気の短い人には収穫させられない。だって、そりゃぁ、チマチマした作業だからだ。
少しでも日光を浴びようとする株は、花先をグーンと伸ばしている。次から次と花を咲かせ、実を結び、たわわに赤くなる。子孫繁栄もお盛んで、ぐんぐんランナーを伸ばす。その先には、赤ちゃん株が芽を出し、着地したら即根っこを張るのだ。とにかく、何処へでも伸びてゆく。
その姿は、たくましい。
この地へ移って15年が過ぎた。荒地を耕して畑にし、あれこれ作物を植えたが、そもそもの粘土質が災いして、元気に育つ植物は多くはない。その中で、元気に育っているのが、ベリー類である。ブルーベリー、ブラックベリー、ストロベリー。ミント類も元気だ。つまり、痩せた土地の方が育つ植物である。せっせと肥料を入れて、土地を肥やすのは本意ではないので、結果、これらが生き延びたのである。
そうか、そうだよな。
土地に合ったものを育てれば、自然と育つんだ。
人も、同じかもしれないな。
鍋いっぱい分のいちごが溜まったら、初夏の味のジャムを作ろう。この時期だけの美味しさだ。