どちらかというと、山桜の方が好きである。
パッと一気に花開くソメイヨシノも綺麗だが。ポヤポヤと奥ゆかしく咲き出す山桜を愛おしく思う。
通年なら、黄金週間にかけて満開になるのだが、今年は、山桜の開花も早い。日毎芽吹いてゆく木々たちに紛れて、うす桜色の花がポヤポヤと揺れている。
山桜が好きだった友は、友人たちの記憶の中にいる。北国の遅い春を待ち焦がれた友は、萌黄色の芽吹きの中に咲く淡いピンクの花を愛していた。雪に閉ざされた季節も、嫌いなわけではないのだが、山々が呼吸し始めた季節の花に、生命の息吹を感じていたのだと思う。
有志たちは、彼女を思い、三本の山桜をこっそり植樹した。厳しい冬を乗り越えられなかった樹もあるが、無事春を迎えた樹は、今年も可憐な花を見せてくれるだろう。高原の春は、もう少し先だ。
ここの庭は、新芽が一気に吹き出した。草取りシーズンの到来である。おっと、その前に車のタイヤ交換しなきゃ。